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2006年02月27日

携帯通信事業者分野の見通しをよくするための本

昨日の日曜日は、耳の奥が痛いなあと思いながら、先日アマゾンで購入した「風雲児たちが巻き起こす携帯電話崩壊の序曲―知られざる通信戦争の真実」を読みました。

日経コミュニケーションの記者の取材をまとめて、昨年(2005 年)の 12 月に発行された本。通信分野に関してある程度の経験・知識を持っている人であれば、現時点での携帯通信事業者(特に、設備面から見た事業分野)を取り巻く環境が短時間でわかりやすく理解できると思います。

ソフトバンクの携帯事業への参入に始まり、ライブドアの無線 LAN 事業への挑戦(いまはどうなっているのか不明ですが、同事業におけるパートナー各社のポジショニングなどは知らないことも多くて「へぇ」と)、NTT ドコモ・KDDI・ボーダフォンそれぞれのお家事情、ウィルコムの復活劇の詳細等、ずいぶんきちんとまとまっています。

携帯通信事業者(移動体通信事業者といったほうがいいのかな)のインフラ事業者としての側面を見るには、ハンディでちょうどよい本だと思います。ただし、この分野は今年もさらに動く年なので、賞味期限としては今年末までぐらいかもしれません。

ちなみに耳の奥の痛みですが、今朝病院に行ったのですが、少々ハズレの病院だったような気が。とりあえずもらった薬を飲んでるのですが、これで直るんだろうかという心配が少し……

2006年03月18日

『ウェブ進化論』 梅田望夫(ちくま新書)

去年の秋、日比谷で行われた梅田望夫氏の講演会を聞きにいったことがあります。新潮社の雑誌『フォーサイト』が主催していて、一時間ほどの講演と一時間近くのQ&Aという組み合わせで、あっという間に時間が過ぎました。非常に楽しかった記憶があります。

この講演会は、終了後からログがすぐさまブログにアップされたり、そのログをみて梅田氏が自身のブログでコメントされたりと、ネット的には盛り上がったところもあったのだけれど、僕自身もいろいろ考えたことはありながらも、ばたばたした時期だったので自分のブログにエントリを書くことも無く、話を聞くにとどめていました。

『ウェブ進化論』はその時の話と、梅田氏のブログ "My Life Between Silicon Valley and Japan" を普段から読んでいると、内容はだいたい想像できるだろうと踏んでいました。実際に読んでみると、やっぱりある程度はこれまでに梅田氏が書かれたり話されたりしたことの(発展途上の)サマリーになっていました。

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2006年03月31日

プロフェッショナリズムと新自由主義モデル - 『国家の罠』を読んで

今日は年度末最後の日とか、たまってた仕事をようやったあらかた片付けたとか、来週は出張なのでいろいろ準備があったとか、夕方から「ソフトバンク、ボーダフォン買収で幕が上がる - 120兆円情報通信産業の波乱の行方」というセミナーに時間を間違えつつも行ってきたとか、その後セミナーに来ていたシリコンバレー繋がりの友人とメシを食いにいったとか、いろいろあった一日である。

それぞれについて書きたいことはたくさんあるのだけれど、でも、なんとなしに、今日読み終わったこの本の感想を書くことにする(書きかけだったから、というのが主な理由)。

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて
佐藤 優
新潮社 (2005/03/26)
売り上げランキング: 733
おすすめ度の平均: 4.75
5 何が真実であるのか?
5 途中での感想ですが
5 こういう才能を無駄にしてはいけない

amazon.co.jp の書籍レビューは的外れな煽り系ばかりに見えるけれど、「出版社からのコメント」が比較的まともなので本書の紹介として引用してみます。

 1991年ソ連消滅。エリツィン大統領の台頭から、その後の大混乱の時代を経て、プーチン氏への政権委譲へと続く90年代激動のロシアを縦横無尽に駆け回り、類い希な専門知識と豊富な人脈を駆使して、膨大な情報を日本政府にもたらした男、それが元主任分析官、佐藤優だ。

 2000年までの平和条約の締結と北方領土の返還という外交政策の実現を目指して、ロシア外交の最前線で活躍していた彼は、なぜ「国策捜査」の対象となり、東京地検特捜部に逮捕されされなければならなかったのか? そもそも、検察による「国策捜査」とは何か?

さらに、鈴木宗男代議士による外務省支配の実態とは? 小泉政権誕生の「生みの母」とまで言われた田中眞紀子外相の実像とは? 宗男VS.眞紀子戦争の裏側で何が起こっていたのか──。

 512日にも及んだ獄中で構想を練り、釈放後1年以上をかけて執筆された、まさに入魂の告白手記。

この本を読みながら考えていたキーワード群は主に2つあります。

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2006年04月02日

「ちゃんといいかげんに生きる」 - 『働く過剰』を読んで。

先に取り上げた、玄田有史氏の『働く過剰 大人のための若者読本』(NTT出版)を一から読みました。働くことの意味を考えるうえでの good reference かな、と。

で、出張準備しなくちゃ……なので、気になったところだけ抜粋しておきます。

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2006年04月09日

『半島を出よ』を機内で読む。

ここ数年、長編小説は出張時の機内で読むのが定番化しつつあります。元々は小説読みなので、長時間の機内は長編小説を読むと結構乗り切れます。疲れていて細かい字に集中できないほど疲れているときはビデオを見てしまいますが、往復のフライトのうちどちらかは何か読んでいると思います。

あと、出張の回数に比べ購入する小説の数のほうが多いので、未読の本がたまっていく一方となっていて、自宅の本棚には 1m 以上の未読本コーナーがあります。その中の一つを今回ようやく読むことができました。村上龍の『半島を出よ』です。行きの機内で上巻を、帰りの機内で下巻を読み、残りの時間でこの感想を書いています。

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2006年04月14日

『カレーソーセージをめぐるレーナの物語』

物語の中に出てくる風景や光の加減、食べ物や風の香りなどをうまく想像しながら読み進めるためには、ある程度の経験が必要なのかも知れないと思いつつ、この本を読みました。

昨年の秋、年末のドイツ旅行に向けてこの小説を手にいれました。しかし、よくあることですが、最初の数ページをぱらぱらと眺めただけで放ってあったのです。旅行からはや4ヶ月が経った今日、まとまった時間ができたので、午後はのんびりとこの小説を読んですごしました。

この小説のキーワードの一つは、タイトルにもある「カレーソーセージ」です。カレーソーセージと言われても、見たこと、食べたことがないとピンとこないですよね。僕もこの本を手に入れたときには何のことだかまったくわかりませんでした。小説の冒頭部分にあるカレーソーセージの作り方は次の通りです(白ソーセージ云々というのは、ミュンヘン名物の白ソーセージのことを指しています)。

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2006年04月25日

光ファイバーと IP 化をめぐって - 『光回線を巡る NTT、KDDI、ソフトバンクの野望』を読んで

今日からヨーロッパ出張なのですが、機内でこの本を読みました。ここ2,3年の間に固定系の通信業界で起きたざっと眺めるには良い本です。

タイトルに「光回線」とありますが、これに「IP 化」を加えて、固定系の通信業界は、ゲームのルールというか、ゲームそのものが大きく変わろうとしています。この変化の様子を、プレイヤー毎(パワードコム、KDDI、東京電力、NTT、ソフトバンク、総務省他)にひも解いています。

例えば、出てくるイベントの幾つかを時系列に並べなおすと、こういう感じになります。

2004/5/27
ソフトバンク、日本テレコム買収合意発表

2004/6
パワードコム社長に中根氏就任
→ 増資による財務健全化の後、KDDI の法人向け固定通信部門の統合へ

2004/8/30
ソフトバンク、「おとくライン」発表
→ 発表にて孫社長が「これが日本テレコムを買収した答えです」と明言。
→ 9/15 には KDDI が「メタルプラス」発表

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2006年07月09日

「サウスバウンド」奥田英朗

昔、過激派だった変わり者の父・一郎を持つ小学六年生の二郎。彼の視点から描いた、東京・杉並と沖縄・八重山での少し変わった生活(?)を描いた長編小説。登場人物の設定の都合良さは、まぁ、しょうがないとしても(父が過激派の重鎮だったという設定は、ね)、端役とおぼしき登場人物までがとても生き生きしていて、また個々のエピソードと全体のストーリーの絡め方もうまくて、ぐいぐいと読ませる。

二郎の周りにいる変わり者は、父である一郎だけではない。その父と夫婦である母も変わっている。母が、沖縄・西表島への引っ越しを告げた時のことである。

「我が家は、沖縄の西表島に引っ越すことにしました」
桃子が箸を持つ手を止める。二郎は口にご飯をほおばったまま、噛むのをやめた。
「あなたたちにとって、いい人生経験になると思います。大学に行って会社員になるとしたら、多少の不利益は被るかもしれませんが、そんな誰もが歩む人生に、たいした価値があるとは思えないので、東京での生活を終わりにします」
すぐには感想が浮かんでこない。とりあえず口の中の物を飲み込むことにした。
「もちろん、あなたたちは永遠に親のものではないので、自立できると判断した時点で、独り立ちしても構いません。ただ十五歳までは、おとうさんおかあさんと一緒に暮らしましょう。だから、今現在の友達とは一旦お別れです」
その言葉を聞き、淳や向井の顔が浮かんだ。リンゾウも、サッサもハッセも。
「いつ引っ越すの?」二郎が聞いた。
「お店の家具や食器を売りさばき次第、出発します。たぶん、二、三日のうちに。こういうのはだらだらやるものじゃないし」

<中略>

「転校先は、なんて名前の小学校?」
母がテーブルに頬杖をつく。「二郎と桃子は、学校、必要?」軽い調子で聞いた。
二郎は、言葉の意味を量りかねた。父が言うならまだしも、母は普通の大人だと思っていた。
「……必要だけれど」二郎が答える。
「桃子は?」
桃子は黙ったままだ。納豆を御飯に載せ、元気なく口に運んでいる。
「あなたたちが学校で教えられていることって、本当はたいして重要なことじゃないの。勉強にはもちろん、集団生活のルールなんかでも。だって、通学路しか通っちゃいけないなんて、あきらかに意味のない決めごとでしょ。国は国民を、大人は子供を、それぞれ管理したいだけなんだから」
母が、父が言うようなことを口にした。結局、似た者同士だから夫婦になったのだろう。
「学校には今日のうちに連絡しておきます。だから二郎と桃子は、友達にお別れを言っておくように」

母、マジでかっこよすぎる。こんな人がかあさんだったら、絶対に人生楽しいはずだ(または絶対に人生大変なはずだ)。

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2006年08月26日

「日々ルーチンな仕事に追われている人は、ルーチンな仕事の処理に埋没して長期的な展望とか革新的な解決策とかを考えなくなってしまう」

今日は、あるプロジェクトで一緒の人から教えてもらった本を読んだところ、なかなか考えさせられるところが多いので紹介。

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2006年09月03日

「ぼくたちには見えないところで行われている地球の営みに、もっと耳をそばだてていないといけない、と言いたいだけだ」『アースダイバー』 by 中沢新一

まだ読んでいる最中だが、この本は縄文的思考を残す東京と資本主義について描かれた本である。

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2006年10月15日

「舞踏会へ向かう三人の農夫」リチャード・パワーズ

一ヶ月ほど前に夏休みのアメリカ旅行中に読んだ本。5 年ほど前に買っていたのだけれど、読むためには体力がいりそうなのでのびのびになっていた。ようやく今回の夏休みで手に取ることができた。

テキストを読むのが好きだと、この小説は面白いはず。評論と物語のミクスチャーという感じといっていいのかな。僕は十分に堪能できました。

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2006年11月26日

『疾走』、『流星ワゴン』(重松清)

重松清の小説をここのところ、立て続けに2冊読んだ。この小説家は、孤独だけれどずっとひとりぼっちじゃない、ということを書くのがうまいと思う。

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2006年12月23日

「ハルキ・ムラカミと言葉の音楽」ジェイ・ルービン

今日から少し早めの冬休み。年末までフランス・パリであんまり目的もなくぶらぶらとのんびりする予定。

そして、パリに向かう機中で読み終えたのが、村上春樹作品の英訳者であり、日本文学研究者であるジェイ・ルービンによる村上春樹論。読みはじめたのは11月中旬だったが、最近までプライベートな時間の大半をあるプロジェクトのようなものに費やしていて中断しており、今回のフライトでようやく読了。

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2007年01月03日

「国家の品格」藤原正彦

大雑把にいうと、アメリカはだめ、市場原理主義はだめ、民主主義も自由もだめ。自分の帰依する「武士道精神」とそれに関係するものが正しいので、これに寄り添えば「失われた日本の品格」を取り戻すことができると主張している本。

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2007年06月18日

雪によってもたらされる狂気と明治の暗さ 『八甲田山死の彷徨』新田次郎

酷寒の八甲田山において無為な雪中行軍を強行させられて 200 名近くの陸軍兵士が亡くなっていくさまがこの小説の一つの軸。基本的にはとても暗いのだが、ノンフィクション的に書かれているために誰かに感情移入することもできない。感情移入が難しいのがいいのか悪いのかわからないけれど、確かに筆力の高さを感じます。

仕事でつきあいのある方から「今読んでいるのですが、面白いですよ」と薦められて買っておいたのを今回の出張に持ってきて、シカゴ行きの機内で読みました。

あらすじは、日露戦争を間近に控えた明治後期のこと。青森と弘前の二つの陸軍聯隊が厳冬期の戦闘のための研究という名目で、厳寒の八甲田山山中において行軍を行うことになる。平民からたたき上げた優秀な神田大尉率いる青森第五聯隊は、準備段階から指導権が錯綜し、実際の雪中行軍では準備不足、上官の出過ぎた指揮権発動、不適切な状況判断に史上稀に見る寒波に襲われたという不運が重なり、210 名中 11 名だけが生き残った。

一方で弘前第三十一聯隊は、この行軍を率いる徳島大尉が指導権を準備段階から確保し、一名の死亡者も出すことなく完了することができた。しかし、皮肉なことに青森第五聯隊の遭難が広く報道されたために、弘前第三十一聯隊の業績は喧伝されることなかった。そして、この行軍に参加した弘前第三十一聯隊の多くは二年後に始まる日露戦争にて戦死または戦傷した。青森と弘前の二つの陸軍聯隊はもちろんのこと、それ以外にもこの行軍に関わって死んでしまった者、生き残った者、それぞれいずれもがその末路は暗く悲しいものであった。

この小説、そういえば、映画化されているんですよね。僕は観ていませんが、公開当時にテレビCMで「天は我らを見放した」というフレーズが連呼されたことは覚えてます。このフレーズは小説の中にも出てきますが、国家の繁栄と引き替えに澱のように少しずつ溜まっていく(説明しにくい)明治という時代の暗さを「天は我らを見放した」というフレーズが現しているような気がしました。

今の時代に置き換えて考えてみると、ここまで決死の覚悟で身を投げ出す刹那感がなく、たとえ国家を背負っている立場を考えてもこのようなフレーズが成立するシーンはほぼ無いように思います。

明治の暗さが数十年後に記されたこの小説に現されているなら、現在の暗さはどういう小説に現れていくのでしょうかね?


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2007年07月22日

『なぜ社員はやる気をなくしているのか』

会社で「この本を読め〜っ」と指示があったのでぱらぱらと読んでみました。成長・変革する組織を作り上げる、ということについての本です。

内容についてあれこれ言う前に、2カ所ほどすこし長めですが引用します。

 下から見れば、「上司が自分の言葉で語っていない」ことが決定的に大きな問題となる。「自分の言葉で語っていない」というのは、当たり前の感性を失っていない人は聞いていればわかるものである。「自分の言葉ではない言葉」は心に響かないし、信頼もされない。
 部下には「よく話し合え」と言っている当の本人たちが、腹を割って話しているようには見えないのも、建前と本音のダブルスタンダードが当たり前になっているところではよく起こる現象である。通り一遍の話をすることはあっても、お互い本気でぶつかり合って「仲のいいけんか」ができるような関係になっていないのは、幹部どうしでは特に多い。
 加齢と共に著しく減退していくのが人の話を聞く能力である。よくありがちなのは、話を聞いている本人は「聴いているつもり」なのに、相手はまったくそう受け取っていない状態である。なぜそんなことになるのかと言えば、たとえば、聞いてはいるが、すぐに我慢しきれなくなって相手の話を途中でさえぎってしまう、といったことが起こるからである。待ちきれずに結局、自分の意見を言いはじめてしまうのだ。これは、話を最後まで聴き終わる前に、途中で話の内容を、自分が勝手につくったストーリーで予測してしまうから起こる。話を聴いているつもりでいて、実は自分の聞きたいように、自分の用意したストーリーに沿ってしか聞いていないのである。

なんだか琴線に触れたんですよ、この2カ所。こういうのって、折にふれて客観的に言われないと忘れがちなだね、と。というわけで引用を。

で、どういう本だったかというと、組織を進化させる価値観を共有して、さまざまなレベルでの信頼感に支えられながら、内発的動機をもつ社員によって変革する組織をつくる、ということについての一つの型を示した本。この本で提示されている考え方は特に新しくなくて、まず、組織環境の側面では「経営」と「仲間」への信頼感に支えら得る「場」を作り上げることが必要であり、そして「スポンサーシップ」と呼ばれる広義のリーダーシップによる組織運営を行うことが、組織を変革につながるというものです。

少々強引かもしれませんが、社内でのコミュニケーションを考えるための条件と、実践の際の方向感を(精神論的な側面をすこし強めに)重点的に整理して示した本だといってしまっていいのかな、と。ようするに、変化しはじめようという組織の中で起きること(当事者にとっては起こすこと)を描いているわけですから。

このような段階にいたるまでには、変革の理由である「危機感」を徹底的に議論しなければならない。ただ、それはそんなに簡単ではないですよ。「危機感」というは一般的には非常に漠然としていて議論するのが困難ですから。この「危機感」の共有が組織変革の一番やっかいなところだと思うのですが、そこにはちょっと届いてなかったですね、この本は。

なぜ社員はやる気をなくしているのか
柴田 昌治
日本経済新聞出版社 (2007/05/16)
売り上げランキング: 183
おすすめ度の平均: 4.5
5 「うんうん!」と思える内容でした
4 経営者は社員に対して働く意味と生きがいを伝えているか
5 オススメの一冊

2007年08月26日

『坂の上の雲』司馬遼太郎

日本列島とユーラシア大陸の間にある日本海。韓国やヨーロッパに向かう機内から何度か見かけたことがある。広いようで狭い海域。その南方の対馬列島沖でいまから 100 年ほど前、1905 年 5 月下旬に日本海海戦が行われた。

「坂の上の雲」という小説は、明治時代を代表する俳人・正岡子規と幼少のころから仲が良く、日本海海戦で先任参謀を務める秋山真之、その兄であり同じく日露戦争で陸軍の騎兵隊を率いる秋山好古の3人が松山で育つところから始まる。そして正岡子規の散文改革運動から正岡子規の死、そして日露戦争のいくつかの戦いを経て、日本海海戦に向かって話が進んでいく。

どういう物語であるかについては、作者の司馬遼太郎が原著のあとがき(最終的には全六巻だが、新聞小説であるため順次発行された第一巻のあとがき)がうまく言い表しているように思える。すこし長いが引用する。

 このながい物語は、その日本史上類のない幸福な楽天家たちの物語である。やがてかれらは日露戦争というとほうもない大仕事に無我夢中でくびをつっこんでいく。最終的には、このつまり百姓国家がもったこっけいなほどに楽天的な連中が、ヨーロッパにおけるもっともふるい大国の一つと対決し、どのようにふるまったかということを書こうとおもっている。楽天家たちは、そのような時代人としての体質で、前をのみ見つめながらあるく。のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲がかがやいているとすれば、それのみをみつけて坂をのぼってゆくであろう。

たしかに楽天的な人たちの群像劇である。視点を変えれば、あれだけのことを成し遂げるには楽天的でなければできないであろう。ただし、楽天家たちの物語だからといって、中心となる明治という時代が明るく楽しかったかどうかは別問題である。

『八甲田山死の彷徨』読後にも感じた明治という時代の暗さはこの小説にも感じられた(余談だが『八甲田山死の彷徨』で一人の犠牲者もなく雪中行軍を終える弘前第三十一聯隊は、日露戦争(奉天会戦)においてほぼ全滅する)。この暗さの源泉の一つは、この時期の日本がおかれた植民地主義、帝国主義的なパラダイムから生まれているように感じた。また軍隊が関係するとどうしても物語が暗くなる。ある意味、しかたない。

明治初期に国が開いた後、日本の外に直接的、間接的に触れていく人たちのことに興味があって読み始めたが、違うところでまあまあ面白い小説だった。はじめての歴史小説で、未知のフォーマットだったのが良かったのかもしれない。

坂の上の雲〈1〉 (文春文庫)
司馬 遼太郎
文藝春秋 (1999/01)
売り上げランキング: 483
おすすめ度の平均: 5.0
5 「日本人に読んでほしい歴史書」ランクNo1。近代史の一幕を描く感動の名作
5 司馬遼太郎の最高傑作
5 日露戦争以前、以降という視点で読むとさらに面白い。

2007年08月31日

十六歩

ぴしっとした生活を送りたいときのスイッチ、その2。

酔って自宅に帰ってくるときに、ときおり思いいたること。それはエレベーターから自宅の扉までの距離。

I waited for the compressed-air hiss of the elevator doors shutting behind me before closing my eyes. Then, gathering up the pieces of my mind, I started of on the sixteen steps down the hall to my apartment door. Eyes closed, exactly sixteen steps. No more, no less. My head blank from the whiskey, my mouth reeking from cigarettes.

Drunk as I get, I can walk those sixteen steps straight as a ruled line. The fruit of many years of pointless self-discipline. Whenever drunk, I'd throw back my shoulders, straighten my spine, hold my head up, and draw a deep lungful of the cool morning air in the concrete hallway. Then I'd close my eyes and walk sixteen steps straight through the whiskey fog.

Within the bounds of that sixteen-step world, I bear the title of "Most Courteous of Drunks." A simple achievement. One has only to accept the fact of being at face value.

No ifs, ands, or buts. Only the statement "I am drunk," plain and simple.

事実を事実として受け入れられる酔っぱらいが「もっとも礼儀正しい酔っぱらい」。たとえ、エレベーターから自宅の扉までが十六歩でなかったとしても。

2007年10月13日

退屈

ある日の晩のこと。近所の居酒屋で文庫本を読みながら、ビールを飲んでいた。読んでいたのは、近所の本屋で買ったエッセイである。その中にこんなくだりから始まる文章があった。

別に雨降りでもなかったが、ある晩、退屈しのぎにミステリーを読んでいると、犯人が三番目の殺人をしているところに電話がかかってきた。電話は、ミステリーとも殺人ともあまり関係のなさそうな、井上陽水からだった。

この文章の「退屈しのぎ」という言葉に、なぜか、懐かしい思いを感じた。ずいぶん長い間、退屈なんてしのいでないような気がしたのである。少しながら時間に余裕がある日の晩に、居酒屋のカウンターで刺身をつまみつつ、ビールを飲んでいるにもかかわらず、である。

別のエッセイにはこんな文章もあった。すこし長いのだが引用する。

「昔は、なんといっても、乗れる曲がよかったけどな」
「そうだな。ディスコなんかでも、ギンギンの曲がよかったもんな」
「ああ」
「朝まで踊ってても疲れなかったしな」
「でも、ディスコって帰るときが虚しいんだよな」
「いや、その虚しさがたまんないんじゃないか、ディスコって」
「確かに、そういうとこもあるな」
「まあ、どっちにしても昔のことだけど」
「元気だったなあ……俺たちも」
どんな奴らが喋っているのだろうと興味を覚え、体を斜めにずらしてさりげなく後の席を見ると、そこにいたのは制服姿の男子高校生ふたりだった。

<略>

ふたりは退屈しきっているようだった。何度も、つまらない、面白いことはないか、と言い合っていた。それを聞きながら、変わらないな、と思った。彼らの台詞がいつの時代の若者にも共通のものだったからだ。若者は常に退屈している。昭和三十年代の石原慎太郎の小説の登場人物も、常に何か面白いことはないかと叫んでいたような気がするし、四十年代の私だっていつもそう思っていた。退屈で退屈でたまらなかった。すべきことはいくらでもあるのに、もっと面白いものはないかと思いつづけていた。

長い間、退屈をしのいでないのはすでに若者ではなくなったからなのか、とぼんやり考えた。そういや、過去には退屈で退屈でたまらなかった時期があったのに……と。

どうやら、退屈というのは時間が経つにつれて変質するものであるらしい。

 

バーボン・ストリート (新潮文庫)
沢木 耕太郎
新潮社 (1989/05)
売り上げランキング: 144884
おすすめ度の平均: 5.0
5 せっかくならば
5 沢木さんに乾杯!(もちろんバーボンで)
5 深い

2007年11月09日

すこし古い読書感想文を4本

久しぶりに gree にログインした時に、すこし古い読書感想文(レビューともいうけれど)を見つけた。人目につかないところにうずもれてる感じがしたので、ブログに転記してみる。

あ・じゃ・ぱん
あ・じゃ・ぱん
posted with amazlet on 07.11.09
矢作 俊彦
角川書店 (2002/03)
売り上げランキング: 142380

ずいぶん前に読んだ本だけれど、小説っていいよねと、その力強さを深く感じさせてくれた本であり、もう一度読みたいと思ってる。

特に東京出身で大阪にいる人や、大阪出身で東京にいる人(僕はこの類である)だと、感じるところは結構大きいかも。逆に一箇所にとどまっている人には、日本(=じゃぱん)の多様性、多層性がぴんとこないかも。

しかし、この本、もともとは新潮社から上下巻で出ていたのが、角川から一冊で出ているのね。このほうが胡散臭くって、むしろいいかも。(2004/07/29)


新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く
アルバート・ラズロ・バラバシ 青木 薫
NHK出版 (2002/12/26)
売り上げランキング: 2574

「ネットワーク」というキーワードを生業にしている人たちは、この本に書かれていることをどこかしら直感的または無意識に理解しているのじゃないのかな、と思う。テクノロジーとしてのネットワークを考える場合でも、ソーシャルな人的ネットワークを考える場合でも、フラットなネットワークとして考えるよりは、繋がり方のパターンに何らかの法則があると感じるはず。

その繋がり方の法則について、この本は「世界の誰とでも六人で繋がっている」、インターネットの弱点は?ケヴィン・ベーコン・ゲーム、 Google とアインシュタインの繋がり、エイズの急速な広がり、Web リンクのトポロジー、アルカイダの組織、Hotmail 成功の理由など、次々に繰り出される話題をつかって、興味を絶やすことなく語っている。そういう意味では、頭の中でなんとなくもやもやしていたことをうまく晴らしてくれる好著であるし、「ネットワーク」というキーワードを生業にしている人は一度ぐらいは目を通しておいても悪くない本だと思う。(2004/08/28)


会社はこれからどうなるのか
岩井 克人
平凡社 (2003/02)
売り上げランキング: 15252

アメリカ型の資本主義、会社システムと日本型の資本主義、会社システムを対比させるやりかたで、グローバル化、IT革命、金融革命の三つのキーワードを中核として、「会社」がこれからどうなっていくのかを、とても平易な言葉で説明している良著。

他の本とこの本の違いは、平易な言葉を使っているだけではなく、本の前半で、そもそも、会社とは何であるのかを、平易な言葉でわかりやすく解説していること。平易な言葉をつかっても、説明がわかりにくいこともあるのに、そういう罠にはまっていない。これは、まえがきにもあるのだが、著者自身が「わたし自身、一度も会社で働いたことがない純粋培養の学者です」ということをよく理解したうえで、「現実とはすこし離れた位置から、物事を構造的・長期的に眺めて」みた結果であると思われる。

裏オビに「中学生でもわかること。おたくの社長の知らないこと。」という糸井重里のコピーが書かれているが、企業経営に近い立場にいる人にはぜひ読んでおいて欲しい本である。(2004/08/28)


博士の愛した数式 (新潮文庫)
小川 洋子
新潮社 (2005/11/26)
売り上げランキング: 2796

台風が来ている日に外出するのも面倒なので、ずいぶん前に買っていながら手付かずだったこの本を読みました。で、一気に読みきりました。かなり良質の小説です。読みはじめから最後の最後まで手を抜くことなく書かれていて、下手なハリウッド映画を借りて見るより、楽しめます。

この作者の小説ははじめて読んだのですが、いいですね。個人的には、料理や食事のシーンをうまく書ける作家を高く評価する傾向にあるのですが、この人もうまいです。

悪意や悪人の出てこない、ディセントな人たちだけのディセントかつ奇抜な設定の物語(80分だけ継続する記憶、回文、素数、江夏豊、野球カード、オイラーの公式等)ですが、嫌味がなくて、こういう世界があればいいなと素直に思わせてくれます。同時に、人の記憶というのは重要なのだと再認識させてくれました。(2004/09/12)

2007年11月27日

そういえば、「ミシュランガイド東京 2008」買いました。

そういえば、先週の木曜、あわただしく移動する合間に買いましたよ、ミシュランガイド東京版。

MICHELIN GUIDE東京 2008 (2008)

日本ミシュランタイヤ (2007/11/22)
売り上げランキング: 1

赤坂アークヒルズの丸善で平積みになっているものを購入。書店を出てランチに向かったのは近くにあった Soup Stock Tokyo。もちろんミシュランとなんの関係もなし。

この手のモノは、マスコミがムダに騒ぐ ⇒ 本来の客層からすると質の悪い客が増える、という状況が起きるのは自明ですから、しばらくは近寄らない方がいいレストランリストという意味では重宝するでしょうな。選ばれるべきレストランが掲載されているかどうかはしりませんよ、そんなもの。

個人的にはミシュランがネット版を提供しないのか、という点に興味があります。ザガットのネット版の会員なのですが、東京版に加えて、出張とか旅行で出かけたときに海外で使えるのは便利なんですよね。あ、でも、ミシュランはそういうユーザは相手にしないかもですね。おフランスですものね。やっぱりそうですよね。

2007年12月18日

年末年始に読みたい本

今年の年末年始はめずらしくどこにも行かないのです。おそらく十数年ぶりのこと。

で、溜まっていて読めない本を読めればなぁ、とおもっているわけです。今のところ積ん読モードにあるのはこんな本たち。

囚人のジレンマ