中途半端でナイーブな社会意識(被害者意識?)のためにいろいろと損なわれているところがあるけど、ワタクシはかなりのアマゾンヘビーユーザなので興味深く読めた。
内容は 2003〜4 年に市川のアマゾン配送センターでアルバイトとして働いた経験をルポタージュとしてまとめて 2005 年に出版した単行本の内容を第一部とし、文庫化(2010年)に際して単行本出版以降のアマゾンを取材して第二部として追加した書籍。
特に面白く読めたのは第一部の配送センターのアルバイトとして働いている日々や物流システムの描写である。想像通り、配送センターでの作業内容はほとんどが標準化されており、システマチックで合理的な労務管理が実現されている。アルバイトは定められた手順通りに静かに手際よく荷物の入荷をさばき、注文にあわせて商品をピッキングして、配送している。
アルバイトにはノルマが課せられていて、たとえばピッキングは1分で3冊を、検品は1分で4冊を、棚入れは1分で5冊を、手梱包は1分で1個を終わらせなければならない。コストの側面から眺めるとアルバイトの時給は当時 900 円、ノルマ通り作業が進めば1冊あたりピッキングは5円、検品は4円、棚入れは3円、手梱包は1個あたり15円となる。各工程で誰が何をどれだけの時間で作業するかをシステム側で把握しているため、作業が遅い場合には指導され、改善されない場合には2ヶ月ごとの契約更改が打ち切られる。それゆえ契約を打ち切られないためにも、アルバイトは怠けることなく作業を進めることとなる。
配送センターの仕組みの話だけでなく、同僚の何人かと知り合いになり、働くアルバイトの人物像も描かれている。時給900円、フルタイム?で働くことで得られる年収は200万ほど。著者はそういう職場にいるフリーターは20代が中心だろうと思っていたが、実際は30〜50代の「中年男性アルバイト」が主力であった。本書に出てくる人でいうと「島崎さん」である。こういう人たちはある種の「楽天さ」「野太さ」をもって日々を送っていると著者は言うが、「諦念」というべきであろう。
この書籍のマイナスは2点。一つめは、著者は再販制度賛成の立場をとっており、そのフレーム、状況認識がじゃまをして単に嫌悪感を感じるだけで、アマゾンと取り巻く状況に対しての調査・分析が不十分となっている点。二つめは、平均年収500万円超といわれるアマゾンの利用者を年収200万円のバイトが支えている構図(著者曰く「階層社会」)に違和感を覚えるという著者自身は、妻子と家賃12万の家で生活し、妻の仕事の関係でフランス移住することになった立場でもあり、中途半端でナイーブな社会意識を元にした蛇足的な箇所がそこここに見られる点である。
他の物流システムのことはよく知らないのだが、アマゾンのような有数の小売企業の物流システムをオペレーション側からの視点で描かれている点が面白いのだと思う。ジェフ・ベソスのような経営者のインタビューを読んだり、SCM や WMS などのような管理システムの話を聞いたりすることでは得られないたぐいのものである。諸々のマイナス点があるものの、著者が調査をすすめれば進めるほど再販制度の問題やアマゾンのすごさを浮き彫りにしてしまう、というねじれた構造から生まれる面白みも加味されて、さほど悪くはなかった。

