「リーダーシップの旅」野田智義、金井壽宏
この本を書いた野田さんの論文を根来先生に紹介いただいたのが、この本を読むことになったきっかけでした。
紹介された論文は、アメリカのベビーベル(1984年の分割当時の地域電話会社の呼び名)7社が、分割当時は似た経営環境だったにもかかわらず、時を経ると戦略が大きく異なった現象を時系列に分析したもの。分割時の経営環境と経営陣の経験・体験がその後の戦略の決定因子として影響が大きいという論旨で、良い論文でした。根来先生曰く、欧米のMBAスクールで教えていて、帰国後早稲田でも1年ほど教えておられたこともあるそうですが、その後リーダーシップに関する NPO に専念された、ということです。
僕自身も小さな組織を任されていることもあって「マネジメントってなんだろう?」と考えることがよくあるのですが、この本を読んですこし楽になりました。マネジメントやリーダーシップとは?という問いに対する答えはそんなに簡単に出てこないんだよ、ということなんだなーと。
ポイントが要約されているところをすこし抜粋してみます。
マネジメントとリーダーシップは異なる。
マネジメントは、複雑性に対処し、組織の安定性と持続性を維持するために機能する。
これに対し、リーダーシップは創造と変革を扱う。「見えないもの」を見て、その実現に向けて人々の価値観や感情に訴え、彼らの共感を得て、自発的な協働を促す。
創造と変革には、事前の不確実性と事後の常識性という共通点があり、この非連続をリーダーは飛び越える。
環境変化が著しく、創造と変革の時代を迎えているからこそ、リーダーシップは求められている。
しかし、組織という環境は、リーダーシップを育むには必ずしも適していない。組織の中で生きる個に対して、組織は強い同化力を及ぼすことで、この論理を見失わせてしまうことがあるからだ。
もう少し。
夢をもったり、志を立てたりすることは、「自分探し」と一見似たところがある。
しかし、自分探しが、逃げ道や問題先送りの言い訳になっている限り、それは私たちをどこにも連れて行ってくれない。自分探しに明け暮れるよりも、今の場所にとどまり、現実と向き合って、自分に取ってのハードルを一つ一つ乗り越えて行くことが必要ではないだろうか。
実績を上げ、人の信頼をかち取り、信用を蓄積していくことは、自分にとってのリーダーシップの旅を準備するためにも、旅を始め、継続するためにも有効だ。では、私たちは、この数年で、どんな信用を蓄積したのだろうか。それは、裸の自分のとして得た信用だろうか。それとも名刺や所属する組織の肩書きによって得た信用だろうか。
信用(信頼)の蓄積には、落とし穴が待ちかまえている。手段であるはずの信用蓄積が、いつの間にか目的になってしまうと、私たちは旅にでることができなくなる。しかも、皮肉なことに、努力家で責任感が強い人ほど、日常に追われ、不毛な忙しさから抜け出しにくい可能性がある。
立ち止まり、自分と対峙し、改めて自分が来た道を振り返る。そこに、自分が本当に望んでいたものがあれば、大人になって夢や志を持つことができる。
読む前と読んだ後で、ものごとの捉え方が変わる場合、その本は良い本と分類してよいと思いますが、そういう類の本でした。
リーダーシップの旅 見えないものを見る (光文社新書)
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