修士論文のテーマが「電子マネー」で、そこにはSuica も含まれているので、Suica の準備〜登場から展開の歴史を知るために論文執筆中に読んだ本。社会インフラとしての鉄道情報処理技術が、どれくらいの準備期間を経て、どれくらい周到に準備されて世の中に登場するかがイメージできて論文執筆中にもかからず面白く読んだ。
Suica が開始されたのは 2001 年 11 月。しかし、Suica のベースとなる 非接触 IC カード技術の利用の検討が鉄道総合研究所(鉄道総研)で開始されたのはそれから 10 年以上さかのぼる 1987 年のこと。2009 年の今から始めると 2023 年に日の目を見るということなので、とても気の長い話。
で、時間はかかるものの研究開始から立ち上がりまで順調にすすんだかというと、物事はそんなに甘くはない。鉄道総研で研究していた非接触 IC カード技術がようやく形になり始めようとしている 1990 年に、JR 最大の企業である JR 東日本は、関西の私鉄を中心に採用されてきた磁気カード技術を自社の自動改札システムに本採用する方針を決めた。JR 自動改札の償却期間は 10 年。つまり非接触 IC カードのような新しい技術にとっては 10 年間は出番がないということを意味する。しかし、JR 東日本の非接触 IC カード研究チームと研究期間である鉄道総研、研究開発元のソニーは、この失われた 10 年を利用して非接触 IC カード技術ベースの自動改札システムを成熟させていく(この本では主に JR 東日本側からの視点で描かれている)。そして、10 数年の長い時間をかけて、一日に 2000 万トランザクション(Suica + PASMO)を発生させる鉄道乗車カードシステム基盤の実現へと導いていった。
ある仕組みの実現にむけて重要な役割を果たした技術者の姿を身近に感じることができる本。新しいことに取り組もうとしている若手技術者が読むと勇気づけられるんじゃないかな。また、Suica だけでなく電子マネー普及への貢献度をかんがえると、ソニーの FeliCa チップ開発陣にももっと日が当たってもいいのに、と感じた。
東京新聞出版局
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