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「舞踏会へ向かう三人の農夫」リチャード・パワーズ

一ヶ月ほど前に夏休みのアメリカ旅行中に読んだ本。5 年ほど前に買っていたのだけれど、読むためには体力がいりそうなのでのびのびになっていた。ようやく今回の夏休みで手に取ることができた。

テキストを読むのが好きだと、この小説は面白いはず。評論と物語のミクスチャーという感じといっていいのかな。僕は十分に堪能できました。

amazon.co.jp の紹介文は今ひとつなので、amazon.com の book description を簡単に訳してみる。

1914 年の春、著名な写真家であるアウグスト・ザンダーが、田舎の舞踏会に向かう三人の若者の写真を撮影した。第一次世界大戦を目前に控えた平和の最後の瞬間をとらえた、いつまでも心に残るその画像は、パワーズのこの秀逸な小説の中心となっている。三人の若者のその後の運命が綴られると共に、二つの現代の物語が明らかになってゆく。年齢の若い物語の語り手は徐々に写真に惹かれ、取り付かれていく。同時に、ボストンに住むコンピュータ関係のライターであるピーター・メイズは、この写真と自分の間に個人的なつながりがあることを発見する。三つの物語は驚くべき道のりをへてつながっていき、暴力と進歩の二十世紀に広がるミステリーに読者を巡り会わせてくれる。

(原文)
In the spring of 1914, renowned photographer August Sander took a photograph of three young men on their way to a country dance. This haunting image, capturing the last moments of innocence on the brink of World War I, provides the central focus of Powers's brilliant and compelling novel. As the fate of the three farmers is chronicled, two contemporary stories unfold. The young narrator becomes obsessed with the photo, while Peter Mays, a computer writer in Boston, discovers he has a personal link with it. The three stories connect in a surprising way and provide the reader with a mystery that spans a century of brutality and progress.

物語としてのフレームは、この紹介文で概ね事足りるはず。

小説のフレーバー(?)を伝えるとするなら、紹介文と重複するかもしれないけれど、一つのイメージとそこにつながる物語の重なり合いとディテールが本当によく練り込まれている。で、そのつながり方に比重が高いのではなく、イメージを見ることで見ている側が変化させられる、歴史や記録や記憶は、それらに向かい合うものを揺り動かす、というところにあるように読めます。

たとえば、こんな箇所があります。

(中略) 新しい経験がひとつ訪れるたびに、我々が自分の過去の連続性を組み直すとするなら、おぼろげな、いまだ経験されざる過去から送られてくるメッセージ一つひとつが、未来を組み直せという誘う挑発であるはずだ。観察によって変わらない行為はない。観察者を巻き込む行為を伴わない観察はない。何のきっかけもなしに認識の湧いてくる瞬間一つひとつが、凡庸な日常世界へ戻っていくよう私に呼びかける。捏造と観察から成る、決まりきった日々の暮らしをつづけるよう、何であれ自分の手で為しうる仕事に手を汚すよう、呼びかけるのだ。

なんというか、凡庸な日常生活での経験・観察が新しい経験・観察を呼び覚ますのだ!ということはとりあえず言ってしまっていいのじゃないか、という気がしました。

意外に体力がいらないこともわかったので、もう一つ翻訳されている小説を近々読んでみようかな、と。

(追記 10/15 14:40)

ここにある座談会によると「囚人のジレンマ」の翻訳が今年の秋にでるそうですね。原書で読んで途中で挫折した小説なので、たのしみです。既発売の「ガラテイア2.2」ではなく「囚人のジレンマ」を先に読むことになるでしょう。

舞踏会へ向かう三人の農夫
リチャード パワーズ Richard Powers 柴田 元幸
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2006年10月15日 12:29に投稿されたエントリーのページです。

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