今日は、あるプロジェクトで一緒の人から教えてもらった本を読んだところ、なかなか考えさせられるところが多いので紹介。
というか幾つかの部分から抜粋してみる。
そもそも人間は、目の前に大量のルーチンワークを積まれると、その処理に追われ、創造的な仕事を後回しにしてしまう傾向がある。創造的な仕事とは、仕事のやり方自体を根本から変えるとか、長期的な展望を思い描いてみるといった作業のことである。「ルーチンワークは創造性を駆逐する」。ハーバード・サイモンの言う意思決定のグレシャムの法則(引用注: 意思決定は定型的意思決定と非定型的意思決定に分けられるが、非定型的意思決定は面倒で難しいため、定型的意思決定を優先して非定型的意思決定を後回しにしたり、非定型的意思決定を定型的意思決定で行おうとする)である。つまり、日々ルーチンな仕事に追われている人は、ルーチンな仕事の処理に埋没して長期的な展望とか革新的な解決策とかを考えなくなってしまう、ということである。
まさしくその通り。どこを見渡しても、こういうことに陥っているケースが多い。
かといって、時間に余裕があれば、ここでいう「創造的な仕事」にすぐに取りかかれるわけでもない。そこを手早く取りかかれるためには、また別の仕組みが必要とされるはず。
しかし、現実にはまったく逆のことが多くの組織で見受けられる。優秀な技術者ほど根回しなどの雑事まで大量に集中する傾向が強い。少し力をつけてきて、その能力が目立ってくると、大量の雑事もたまってきて、結果的に有能な技術者がコンセプトを考えることに費やせる時間は急速に少なくなってしまっているのが現状なのである。できる技術者を思い切って雑事から解放してあげる勇気が上司たちに必要である。 また、基本コンセプトを考えることのできる技術者に、処理できないほどの市場情報を投入したり、不良な情報を投入してしまってはいけない。しかし現実には、市場競争で負け始めた会社ほど、営業の人々がやっきになって情報を収集しすぎ、しかもそれをそのまま直接技術者に丸投げするということがしばしば発生する。こういう時に営業マンは、集めた情報の量が多いほど仕事をしているように錯覚する。だから大量の情報を集めてしまうのである。
これもその通り。80:20 の法則ではないが、(技術者に限らず)仕事ができる人々ほど仕事が集まってくる。で、忙しくなると、上記引用のように「長期的な展望とか革新的な解決策とかを考えなくなってしまう」、と。
(組織腐敗のメカニズムを説明する文脈で) まず第一に組織内ルール体系が複雑化すると、若手が「一人前」になるまでにかかる時間が長くなる。煩雑なルールを憶えることに若いうちにエネルギーを割きすぎ、その結果として本当に重要な仕事の構想力や大きな視野といった能力の開発が未発達のまま放置されたりする。細かい手続には通じているが、どうみても「小者」という若手が増えてしまうのである。 二番目の問題は、ルールを守ること自体を重視する雰囲気が組織内に醸成され、どのようなルールであれ、それがルールである限り守るべきだと信じてしまう若手が増えてしまうことである。従順な羊たちが増えてしまうということだ。<中略>ルールを守ることを優先する人はルールにぶつかった瞬間に自分の頭で考えるのを止めてしまう傾向がある。ルールが思考の代替物になってしまっては、若手の成長は望めない。 第三に、重役や部長、課長たちが、細則や派生ルールなどに基づいた筋論の戦いに興じていると、次世代の若手たちは、「その種の議論をすることが経営をすることだ」と勘違いしてしまう。いや、勘違いしないまでも、「その種の議論ができるようにならなければ、経営の本題に入れない」と考えるようになってしまうことは起こりうる。しかし、次世代の人間がその「筋論」を展開するスキルを身につけても、企業業績の向上には結びつかない。
これも、ルーチンワークと創造的な仕事問題を別の視点からみたようなもの。ルーチンワークが本業だと思われてしまうと、新しいものを産み出すことはかなり難しくなり、企業業績の向上には結びつかない。
たとえば社内で新事業開発の企画を正当化するのに、事業内容の検討に六割、社内正当化プロセスに四割の時間を必要とするのは明らかに病気であろう。社内から出てくる批判の対処に四割も時間をとられていては仕事が遅くなり、また実質的な内容の吟味が浅くなる。 しかも、これほど社内正当化プロセスに時間がかかるのであれば、まともな人は新事業の提案など考えなくなる。新事業を自分で企画すれば多数の批判が振ってきて、推進者は傷つくことになる。周りから出てきた新事業の企画を批判しているだけのほうがずっと楽だ。<中略> 気をつけるべき点は、既存製品の改良や多アイテム化は容易に進むのに新規事業の提案が深刻に難しくなるという点である。既に顧客があり、「顧客の声」を示すことができる既存製品の改良・改善案は組織内を通りやすいのである。だからイニシアティブを発揮したがる優秀層の努力が既存の製品のフルライン化へと向かい、本当の新規事業は一切出てこなくなる。既存製品の瑣末な改良提案が多すぎて、逆に新規事業の提案が少なすぎると感じ始めたら、組織の病を疑うべきであろう。
ここに描かれていることもよく見聞きすること(と、人ごとのフリ……)。「イノベーションのジレンマ」にもこの様子が別の角度から描かれていたはず。
となると、革新的なアイディアを作り出して、それを事業化するにはどうすればいいのか?この本にはそこまでが描かれていなかったのがすこし残念だが、いくつかのヒントが見受けられるのは評価してよいと思う。
◇
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コメント (4)
ごぶさたです。勝手にTBしてしまいすいません。最近、若くもなくなってしまいまして、相変わらず部下もいないですが、組織の中での自分の立場も少し変わってきて色々下手な考えをめぐらせています。しかし沼上さんの本は評判がいいみたいですね。早速読んでみます!
投稿者: kurataster | 日時: 2006年8月29日 14:21
いろいろ身につまされます。
特に新規事業と社内正当化プロセスとか、もう(笑)
投稿者: kush | 日時: 2006年9月 1日 01:10
> 早速読んでみます!
どこがぐっときたか、また教えてください。
> いろいろ身につまされます。
よかった。
僕も身につまされたので、世間の人達にもつまされてもらおうと思って(笑)
投稿者: ayustety | 日時: 2006年9月 1日 11:45
こんばんは。
私もこの本読みました。身につまされました(笑)
「社内宦官」「暇な成熟事業部」「コトバ遊び」「トラの威を借りるキツネの権力」「コワイ大人」
NGワード炸裂で、ある意味読んでて気持ち良かったです。
「よくぞここまで言ってくれた!」みたいな(笑)
http://shimizu.typepad.com/vietmenlover/2004/04/post_2.html
投稿者: Tomomi | 日時: 2006年10月10日 22:49